製本豆知識:アンカット製本とは?

【製本豆知識】

「アンカット製本」とは?

冊子の小口(本の天地と綴じの反対側3辺)を断裁せずに製品となっている製本方法です。
冊子の本文は、たくさんの頁を大きな紙に面付けし、それを折った物を順番に重ね、表紙を巻き、ノドを綴じて、最後3辺の小口を断裁して本の形態になります。
その小口を断裁しないと、紙が袋状になっていたり、紙の折誤差がそのままになります。それがアンカット製本です。
袋状になった部分はペーパーナイフで切り進めながら読みます。
アンカットにも種類があり、天アンカットと呼ばれるものは、天だけ未断裁で、他の2辺は断裁しています。天アンカットは文庫などで見られますが、地アンカットは聞かないですね。綴じと反対側が未アンカットで袋状になっているものが、皆さん馴染み深い「袋とじ」とよばれているものです。

文庫本の天

文庫本の天アンカット 未断裁なので不揃いです


 

 


 

 

なぜ「アンカット」製本なのか?

「アンカット製本」というものが何故存在するのか。それは印刷の歴史と深くかかわってきます。
そもそも印刷物、書籍というのは大変高価なもので、写本に始まりグーテンベルグの印刷技術発明、ヨーロッパの産業革命へと推移しても、やはり貴重で、裕福な人の持ち物でした。

本は、紙を折り重ねて糸で綴じ、簡単な表紙が付けられた状態で販売されていたのです。本を読む時はつながった頁をペーパーナイフで切りながら読みました。全て読み終わったら豪華な装丁で製本をし直し、蔵書したのです。もちろん製本しなおしてから読む事もあったでしょうね。

日本で印刷技術が飛躍的に発展したのが明治以降です。ヨーロッパの印刷技術から大いに学んだ背景もあり、アンカットの状態で販売される本もありました。
想像にゆだねる所もありますが、アンカットがそもそも本のあるべき姿である、という憧憬があったのではないでしょうか。

切らないと読めないので、初めてその本を手にして読むというプレミア感もありますし、またペーパーナイフで切ったギザギザの小口は、なかなかに美しいものです。
その為、好んで「アンカット」製本を施す事もあるのです。

 

「フランス装」とは?

本はそもそも「紙を折って重ねて糸で綴じ、簡単な表紙が付けられた状態で販売されていた」と先ほど述べましたが、この状態に倣った製本を「フランス装」や「仮フランス装」といい、日本独自の発展をしています。

もともとはアンカットの仮製本状態を指していたようですが、現在は表紙の付け方(製本の仕方)を指して言い、「フランス表紙」とも言います。
本来なら「上製本」(ハードカバーと言ったほうが分かりやすいでしょうか)にすべき所を、表紙は簡単にしているという意味合いではありますが、これはこれで非常に味わいある装丁となっています。

表紙の四方をグルッと折り返し、本体見返し部分をくるみます。本文より表紙の方が1~3mmほど大きいのが特徴です。
「フランス装」と「仮フランス装」の違いは、糊付けの処理による違いです。
フランス装と言えばアンカットという時流もありましたが、現在はあえてアンカットを指示しないと、小口はきれいに断裁されてしまいます。


綴じ方の色々

書籍の場合、本の綴じ方では「糸綴じ」が基本になります。ハードカバー(上製本)の書籍がありましたらノド側を大きく開いてみて下さい。糸綴じの場合はページを繰っていくと、ところどころ糸が渡っているのが見えます。

話を戻しますが、装丁をしなおす事を前提とした仮製本の場合は、この糸綴じも仮綴じです。綴じ方がざっくりしています。
糸綴じ以外で多く用いられるのが無線綴じ・アジロ綴じといった、背を糊や樹脂で固めた製本方法です。これは背が固く綴じられているためノドを大きく開くと言う事ができません。その欠点を補ったPUP製本は、接着が非常に薄く、大きく開くことができます。

そのほか、中綴じなどでは針金を用いてページを綴じ合わせています。

 

「アンカット製本」の魅力とは

印刷製本の歴史を経て今日の印刷物は、機械化、ハイスビード化、大量生産が前提である事が少なくありません。そのため、その工程にあった作業が求められています。
アンカット製本は、その工程にとってはむしろ手間のかかる商品なのです。特装本(特別な装丁を施した書籍)などを手掛ける場合は別ですが、それでも印刷の段階からアンカットを想定して工程を組む事には変わりありません。

また、ヨーロッパから渡ってきた印刷製本技術は日本で独自の発展をし、「アンカット製本」は本来の用途を為さなくなっております。
そんな中で、現代のアンカット製本は一つの数寄的製本方法と捉える事ができるでしょう。
まばらな紙の重なりが表情となる小口、未カットのページにナイフを入れる動作、切り口から誕生するごく細い紙の繊維。いづれもアンカットだからこその味わいなのです。

束見本

 

 

 

束見本天

アンカットの束見本(サンプル) 3辺の小口が未断裁です

 

 

プリントコンシェルでは

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